東京は世界でも有数の大都市だ。
それゆえ、特に東京の道路を覚えるのは、他の地域と比べても難しいように思えてしまう。
一方、ある程度の大きさの都市で、計画的に交通網が発展していれば、たいてい「基本骨格」なるものが存在する。その代表が、放射道路と環状道路だ。
実は、その基本骨格を覚えることで、関東の道路網を効率よく頭に入れていくことができる。今回はこの記事を読んで、一緒に道路マスターの下地作りをしていこう。
この記事は、「東京の道を覚える」をテーマとしたシリーズの第2弾。
タイトル末尾の【東京A2】は通し番号となっており、A1→A2→A3→…と続いていきます。前回(東京A1)では、まず皇居とターミナル4駅の位置関係を覚えていただきました。
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東京の道を覚えるのは難しいのか?
難しく感じるワケ
そもそも、東京はどれくらい大きな都市なのか。
国際的な都市の定義に照らすと、東京という都市は「東京都」や「23区」というより「首都圏」を指している。この首都圏の人口はざっと3,700万人(2015年時点;関東大都市圏[さいたま市、千葉市、東京都区部、横浜市、川崎市、相模原市])。なんと、日本国民全体の約30%が、国土のわずか3.7%の面積に集中している!これが良いことなのかどうか、一極集中が進んでしまったことの是非については今回おいておく。
これだけ人が密集していれば、それをさばけるだけの交通システムができあがる。首都圏の道路・鉄道ネットワークはまだまだ問題を抱えていたり、未完成だったりするものの、世界的にみれば十分高度に発達している。
なので、地図を見てみると、建物や商業施設がスキマなく集まって、地下街や立体交差がはびこっている。どうしても文字やカラフルな長方形がギュウギュウ詰めになってしまい、パッと見で読む気が失せてしまう。だから東京の道は難しいと感じてしまう。
他にも、以下のような「運転のしにくさ」も関係しているかもしれない。
- 交差点が複雑、信号の点灯サイクルが複雑、立体交差が多い
- 右折や左折の専用車線がいきなり現れる
- 路上駐車が多い
- 路肩が狭い、ない
- タクシーが猛スピードで走っている
- 単純に車が多い など
海外と比べてみると…
しかし、東京の交通網は決して無秩序に発達したわけではない。放射道路と環状道路という基本骨格がしっかりしており、それ以外の道路も合理的に走行している。なので、実は覚えやすいのだ。
例えば、Googleマップ等で外国の都市の地図をみてみると、言わんとすることが分かるだろう。
以下は、バンコク(タイ)の一部だ。
小道(ソイ)は行き止まりばかりで、抜け道があまりない。それぞれの地区で思い思いに路地を作ったためで、まるで毛細血管のようだ。ところどころ抜けられる道も、十分な交通量をさばけるようなものではない。そのため、スクンビット通りをはじめとした大通りに交通が集中し、バンコクの渋滞は日本の社会の教科書に載るほどだ。
次は、ローマ(イタリア)の地図だ。
きれいに1周する環状道路(GRA)が際立ち、放射道路もみられる。しかし、都心はわりと無秩序に道路網が張っている印象をもつだろう。
ひるがえって、東京を見てみる。
鉄道網が重なってみえにくいが、道路網が「クモの巣状」に発達している。つまり、高速道路や大通りの走り方にはある程度の規則性があるので、地図に載っているたくさんのノイズを削ぎ落としてその意味を意識すると、頭に入りやすい。
なお、東京の中でも地域によってネットワークの形は異なる特徴をもつが、その辺りは別記事で解説を予定している。
基本骨格を覚えていく
さて改めて、環状道路は、都市の交通を効率良くする工夫の一つだ。詳しくは以下の関連記事を読んでほしい。
[blogcard url=”https://roadlearning.info/road-pattern2″]
要は環状道路のおかげで、都心に用のない車が都心を通らなくて済むようになり、交通を分散して渋滞を減らすことができる。
現状、東京近郊には高速道路と一般道の両方に、いくつもの環状道路と放射道路がある。細かい定義や厳密な通りの名称はWikipediaなどを見れば載っているので、興味がある方は見るとよいが、道を効率よく覚える上でそこを極める必要性はあまりない。
まずは高速の環状道路 4本
初学者であれば、まずは以下の4つの環状道路を覚えておこう。
高速 都心環状線・中央環状線・外環道・圏央道
4本の環状道路の位置関係は下のシェーマのようになる。
皇居を中心とし、そのそばを「都心環状線」が一周する。残りの3本はかねてから国土交通省が「3環状」と呼んでいて、最近になってようやく整備が進んできている。以下に国土交通省のウェブサイトから一節を引用した。この4本以外の高速や一般道の環状道路はあとで覚えていけばよい(もしそれがなじみのある道路、地元の道路であるなら、今の時点でこのシェーマに自分で追加で描き込んでみてもよい)。
首都圏の道路交通の骨格として、3環状9放射のネットワークが計画されたのは、1963年。以来、東名、中央、関越、東北道など放射方向の高速道路が整備される一方、環状方向の高速道路の整備は遅れました。
― 国土交通省関東地方整備局
http://www.ktr.mlit.go.jp/road/shihon/index00000002.html
放射道路の前に…その名も「6方面コンセプト」
東京を中心に周囲を6つのエリアに分けるといろいろ都合が良い。放射道路を覚えるためにもここで紹介しておく。
首都圏・関東を地図でみると、東京都に埼玉県が乗っかり、その周りを6つの県(神奈川・山梨・群馬・栃木・茨城・千葉)が取り囲んでいるのがわかる。
そこで6県に矢印をのばして、首都圏を6つのエリアに分割してみよう。
放射道路はこれらのエリアに対応させると分かりやすくて効率的に習得できるだろう。解説もしやすい。一般道を覚えていく上でも使える。
そして高速の放射道路 6本
さきほどの6方面にそれぞれ対応した6つの放射道路を覚えよう。東京から放射状にのびる高速道路だ。
高速 東名・中央・関越・東北・常磐・東関東
一般道の放射道路はいま考えなくて良いが、他の地域と同じように基本的には主要な国道が高速道路に並行している。
6放射の位置関係を先ほどのシェーマに描き足した。他の高速の放射道路はあとで覚えればよい。
高速6放射は、これから頭の中に首都圏の道路ネットワークを広げていく上での基本骨格になってくれる。
高速道路の名称をいうときに「〇〇高速」と「〇〇道」という呼び方があるが、一般に以下のように使い分けられている。
「〇〇高速」「〇〇高速道路」:東名・名神・新東名・新名神の4路線だけ
「〇〇道」「〇〇自動車道」:他の高速道路
※ 日常会話では“高速道路”に含めることの多い都市高速は、高速自動車国道(狭義の高速道路)ではない。都市高速は、首都高、阪神高速のように「〇〇高速」の呼び方となる。
個別に呼ぶのでなければ、日常生活では全部ひっくるめて「高速道路」と呼べばOK。
6県になじみのない方や位置関係の危うい方は、美味しい食べ物や有名な名所と関連付けて覚えてみよう。
時計回りに1つ目の「東名高速」
名前のとおり東京と名古屋を結ぶ(東京IC〜小牧IC)。海沿いに、神奈川、静岡を通る東海道ルートである。沼津、焼津など美味しい海鮮が食べられるイメージを持って!
2つ目の「中央道」
東名と同じく東京と名古屋を結んでいるが、内陸(山間)を通るルートである。山梨、長野、岐阜を通る。甲州のぶどう畑、ワイン、ほうとうのイメージ!
3つ目は「関越道」
関越道は、関東と新潟(越後国)を結ぶルート。地図上は11時方向に伸びる。埼玉、群馬を縦断し、沿道には全国有数のスキー場や温泉地が多数ある。群馬の草津温泉、伊香保温泉、こんにゃく!新潟の苗場スキー場、笹だんご、魚沼産コシヒカリ、日本酒以外にも山の幸たくさん!
4つ目の「東北道」
東北道は文字通り、東北を縦断する日本最長の高速道路。東北に向かうので地図上を真上に伸び、埼玉、栃木を縦断する。宇都宮の餃子、日光のゆば、とちおとめを食べよう。
5つ目は「常磐道」
常磐道は茨城を縦断し、福島浜通り(海沿い)を北上する。霞ヶ浦、ひたち海浜公園のネモフィラやコキア、納豆、常陸牛、あんこう鍋、福島第一原発のイメージ。
6つ目は「東関東道」
千葉から茨城の鹿行地域(海沿い)へ至るルート。未通区間あり。落花生、成田空港で覚えよう。内房・南房総へは東関東道ではなく別の道路がつながる。
まとめテスト
まずは、首都圏の数ある道路のうち、4環状と6放射にしぼって覚えていただいた。
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さいごに
ここまでの話は、首都圏の広い範囲で道に詳しくなりたい方に必要となってくる大切な知識だ。土地勘のない人には、ここで是非覚えておいてもらいたい。それぞれの道路の詳しい話は、また別の記事で取り扱う。
まずは都心の道に詳しくなりたいという方も、基本情報として知っておいてほしい。
次は、一般道の環状・放射道路をみていこう。
※ このサイトでは、わかりやすさを優先して筆者なりの解説を展開しています。厳密な定義や解釈と異なる点があったり、割愛したりすることもある旨、ご容赦ください。
この記事を書いた人 Wrote this article
道尾マナブ
茨城生まれの30代医師。東京都内で妻と幼子と暮らす。小さい頃から道路の絵をノートに描き続け、穴あけパンチのゴミに標識の絵を描き、大人になってからは休日にGoogleストリートビューで国内外をドライブして楽しむのが趣味。息子が道路に興味を示さず、東京スカイツリーのソラマチではトミカの店ではなくプラレールの店に入りたがるのが悩み。