道を効率よく覚えるために、ぜひ理解しておいてほしいことがある。
すでに日常生活でよく分かっている方もおられると思うし、一つ一つのフレーズを聞いたことはあるという方もいるだろう。今回はそれらをまとめて「道路網パターン」と称し、列挙していくのでおさえておこう。
道路網パターンは「いかにムダを無くすか」を科学している
皆さんが道路を作る人間だったら、安全のために、渋滞を減らすために、所要時間を短縮するために、どんな工夫が思いつくだろうか。
そもそも、日本の道路には左側通行というルールがあり、道路の真ん中に線を引いて往来を分けている。また、交差点では信号機や標識が設置され、車の流れが制御されている。これらは安全を確保するための最低限の取り決めだ。
その上で、例えば道幅を広げる、車線を増やす、左折・直進・右折で車線を分ける、などが、安全向上や渋滞減・所要時間短縮(=ムダを無くす)につながる。そしてこれらは実際に、道路づくりに取り入れられている。
これから紹介する道路網パターンは、どれも前述のムダを無くす方法と考えることができる。
これらには、世界中の先人たちの長年の知恵と科学が詰まっているといっても過言ではない。
これらを理解しておけば、地図の中に隠れた道路網パターンが浮かび上がって見えるようになってくるだろう。
どんな道路網パターンを理解すればいいの?
仰々しい前置きはここまでにして、おさえておきたいのは「バイパス道路」と「環状道路」だ。
本記事ではバイパス道路について、実例をみながら説明する。
※ 環状道路については別記事を鋭意執筆中
その1 「バイパス道路」
何か問題のある道路を迂回(まわり道)するために、元の道路に並行して別の新しい道路を作ることがある。
この新しい道路をバイパス道路という。これに対して元の道路を旧道と呼ぶことがある。
「何か問題のある」と書いたが、要はさっきも言ったように、渋滞・危険・時間がかかるということである。
今となっては全国津々浦々、色々な場所にバイパス道路がある。何を迂回するバイパス道路なのかによって、3つに分けてみた。
バイパスとは「迂回」を意味する。医療分野でも「バイパス手術」という言葉がある。心筋梗塞に対して行われるバイパス術は、閉塞した冠動脈を迂回するように別の血管を持ってきて末梢に繋ぐ治療法だ。
この頁では、「沼津バイパス」「八王子バイパス」「京滋バイパス」のように、正式にバイパスの名が付けられているような一般道・有料道路、あるいは同じ様な形をした一般道を取り上げる。
なお、一般道に並行する高速道路、高速道路に並行する高速道路、次の記事で取り上げる環状道路もバイパスの役割を果たしていると言える。
1-1. 市街地を回避する
市街地にはお店、路地、信号がたくさんある。
車がお店や路地に出入りする度に、後続車は減速したり止まったりする。また、赤信号で止まる頻度も多くなる。
これらが理由で、市街地では渋滞が発生しやすい。
そこで、市街地を避けるようにバイパス道路を通すと、街に用事がなく素通りするだけの車はバイパス道路を通るようになり、交通が分散するため渋滞が軽減する。
例1 国道6号「土浦バイパス」(茨城県土浦市)
赤:バイパス 青:旧道
例2 国道17号「新大宮バイパス」(埼玉県さいたま市など)
なお、市街地を迂回するバイパス道路ができることの弊害もある。
- 旧道の交通量が減って、市街地の商店や飲食店が廃れる
- バイパス道路沿いに新しい店が続々オープンし、新しい市街地と化す(結局、渋滞が発生)
1-2. 集落を回避する
先ほど述べた「市街地回避」とオーバーラップするため区別するのは難しいが、お店や信号機のない集落を避ける目的でも、新しい道路が作られることがある。
道が狭い、歩道がない、見通しが悪いなどのために、住民が安全に生活できない、騒音や排気ガスの問題に悩まされる、車が減速して流れが滞るなどの問題が起こるためだ。
例3 国道17号(埼玉県上里町勅使河原)
地図上の左の交差点「勅使河原(北)」のストリートビューが以下の通り(左斜めが旧道、直進が現道)
例4 国道20号(甲州街道) 上高井戸〜仙川(東京都杉並区・調布市)
地図上の左の交差点「仙川三差路」のストリートビューが以下の通り(左が国道20号、右が旧甲州街道)
このように、バイパス道路と旧道の分岐点は、鋭いY字の交差点になっているところが多い。
1-3. 山道や悪路を回避する
古くからある山道は、カーブが多く、道幅が狭く、路面も荒れて走りにくいことが多い。
また、土砂崩れや大雪などの自然災害で通行止めになることも多い。
カーブが少なく、走りやすいバイパス道路を旧道に並行して整備することで、スピードアップと所要時間短縮を実現できる。近年も、全国で続々と山間部のバイパス道路の整備が進んでいる。
例6 国道18号「碓氷バイパス」(群馬県松井田町〜長野県軽井沢町)
碓氷峠は古くから中山道の難所として知られている。
旧18号(青線)はカーブが多く走りにくいのに対し、「碓氷バイパス」(オレンジ線)はカーブが緩やかになって数が減っている。悪路の山道を回避しているのだ。
また、旧18号は軽井沢の市街地を横断するので行楽シーズンに渋滞が頻発する。
そのため、市街地を迂回するように、碓氷バイパスに連続して「軽井沢バイパス」(赤線)が整備されている。
1-4. その他
他にもいろんな理由でバイパス道路が作られる。
たとえば、国道145号の「八ッ場バイパス」は八ッ場ダム建設に伴って整備された。バイパスは高台に並行して作られており、ダム完成後、川沿いを走る旧道は水没する予定だ。
バイパス道路は分かった、次は…
バイパス道路のおかげで交通がスムーズになっていること、あちこちにバイパス道路があることは分かった。
次は、環状道路についてみていこう。
市街地を迂回するという点でバイパス道路と共通しているが、区別して次の記事で解説する。
鋭意執筆中
※ このサイトでは、わかりやすさを優先して筆者なりの解説を展開しています。厳密な定義や解釈と異なる点があったり、割愛したりすることもある旨、ご容赦ください。
この記事を書いた人 Wrote this article
道尾マナブ
茨城生まれの30代医師。東京都内で妻と幼子と暮らす。小さい頃から道路の絵をノートに描き続け、穴あけパンチのゴミに標識の絵を描き、大人になってからは休日にGoogleストリートビューで国内外をドライブして楽しむのが趣味。息子が道路に興味を示さず、東京スカイツリーのソラマチではトミカの店ではなくプラレールの店に入りたがるのが悩み。